以前にお話しした「Wellになるための7つの要素」の中で、その人の心身と直接かかわらない要素が5つめの「WELL -SPACE(よりよい空間)」です。組織でいえば「どんな空間で働いているか」ということですが、これは人の幸福感と深く結びつきます。
たとえば、想像してみてください。書類が山積みになった固定デスクと、好きな席を自由に利用できるフリーアドレスのデスク。あるいは、灰色の無機質なキャビネットに囲まれたオフィスと、緑の木々が置かれ陽の光が燦々と降り注ぐオフィス。どちらで働くのが幸せかといえば、間違いなく後者でしょう。
このような、ちょっとした環境づくりの工夫が、Well-Beingすなわち心身のよりよい状態をつくることに役立ちます。そのためのキーワードは、衣服や住環境、香り、音、光、色、温度、さらには音楽やインテリアなどさまざまにあります。
飲食店を例にとれば、お客様が快適に、心から寛いで食事を楽しめる空間は、それ自体が高い価値を生みます。そして、その空間はスタッフにとっても働きやすく仕事のやりがいを感じられる場であり、かけがえのないものです。そこには間違いなく、高い価値を持つ透明資産があるのです。
WELL-SPACEを考える時に大切なのは、そのスペースは人の心(内側)と身の回り(外側)の2つがあるということです。その2つのスペースがバランスよく維持できていると、それはWellな状態になるわけです。ですからまず、自分の心のスペースをどうつくるかが問題になってきます。心のスペースがよりよい状態になっていなければ、身の回りをいくら整えても意味がありません。
心のスペースがきちんとできていないと、行動する際にあれこれと気が散ってしまったり、何から手をつけてよいのかわからなくなるものです。また、自分より他人のことを優先してしまったり、必要以上に他人の視線を気にしてしまいます。その結果、自分自身に軸がないと感じてしまう。多くの人が経験していることだと思いますが、それはすべて心のスペースに問題があるのです。
心のスペースをWellにしていくためにまず大切なのは、過去や未来ではなく「今」に焦点をあてることです。過去をふりかえって後悔したり、未来に不安を感じるのではなく、いま何が自分の心を占めているかを俯瞰する。そして、その中から本当に必要なものを選び、不安や心配の元になるもの、不要なものを捨てるのです。
そのうえで、身の回りのスペースを整えていって初めてWELL-SPACEが実現します。次回はそのポイントをお話しします。
ー勝田耕司
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