コロナウィルス禍で絶好調を続けた外食チェーンの代表格として挙げられるのが「スシロー」。
その基本コンセプトである「うまいすしを、腹いっぱい」を表現したテレビCMの巧みさは以前にこのコラムでもお伝えしました。
低価格でありながら商品の高いクオリティを維持し、旬のネタも豊富に揃えてすし店ならではの楽しさを提供する。そうしたブランドイメージは消費者の中に広く浸透し、スシローにとって最大の透明資産になっています。
その透明資産を生み出しているのは、商品への徹底したこだわりです。回転ずしという気軽な業態であっても、すし店に対するお客様の期待は決して裏切らない。それだけでなく、常に「期待以上」のものを提供する。
そうした努力を続けることは、スシローを展開する㈱FOOD&LIFE COMPANIESの企業文化になっています。
同社が展開しているすし居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉」にも、その企業文化を強く感じます。杉玉は2015年から多店化をスタートし、現在の店数は50店。店数が600店を超えるスシローと比較すれば小規模なチェーンに過ぎませんが、同社ならではのこだわりは随所に感じられます。
とくに感心するのは、すし店としての専門性をメニュー構成においてしっかりと打ち出していることです。
すしは定番のネタ以外に「極み寿司」と称してユニークなネタを豊富に揃えています。「えんがわの昆布〆炙り」のような職人の技術を生かしたものから、フォワグラを乗せた「鮪ロッシーニ風」のような創作系まで。しかも価格は1貫299円均一と、スシローに通じるわかりやすさがある、実に使い勝手のよい価格設定です。
同様のことは一品料理についても言えます。刺身や天ぷらの盛合せといったオーソドックスな定番ものから、「杉玉ポテトサラダ」や「〆さばと沢庵の新たなる出会い」のようなオリジナルメニューまでが揃い、価格は299円と399円の2ライン。
メニュー数は決して多くありませんが、すし居酒屋として十分な品揃えです。絞り込んだ価格設定と合わせて実に使いやすいメニューと言えます。
昨年暮に、居酒屋大手のワタミ㈱が新業態のすし居酒屋「すしの和」をオープンしましたが、この杉玉と比べると業態の完成度という点で大きく劣っています。
「すしの和」が明らかに〝コロナ禍でも売れる商品〟としてすしを選んでいるのに対して、杉玉は〝すしという商品の魅力をどう伝えるか〟をコンセプトの核に据えています。
そのことが結果として、お客様にとっての高い満足度につながっているのです。業態は同じすし居酒屋であっても、企業文化という透明資産が、その完成度を大きく左右することがわかります。
ー勝田耕司
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