ゲコノミニケーションの目的は、お酒を飲む人(ノミ)と飲まない人(ゲコ)が同じ時間を楽しむことです。
その場所を提供する飲食店は当然、両方のニーズに応える商品を揃えなければなりません。アルコールドリンクとノンアルコールドリンクをラインアップすることはもちろん、とくに後者の品揃えが重要になります。
ここにきて、ノンアルコールドリンクを充実させる動きが顕著になっています。コロナウィルス禍で酒類の提供が制限されたことが大きいですが、理由はそれだけではありません。
実は日本人のアルコール摂取量は、ここ20年ほどずっと減少しているのです。若者のアルコール離れに加えて、大きな要因とされているのが高齢化。人口動態の面からもアルコールニーズは縮小傾向にあります。
大切なのは、それを否定的に捉えるのではなく、“積極的な”ノンアルコールのニーズに応えることです。かつての居酒屋のノンアルメニューといえば、烏龍茶などソフトドリンクを数種類揃えるだけでした。
それは明らかにノミ中心の考え方であり、ゲコ向けのメニューは“付け足し”に過ぎません。そうではなく、ノンアルの中でいろんな味わいや、個性あるドリンクを揃えることが大事です。
考えてみれば、ノミ向けのメニューもかつてと比べてはるかに多様化しました。それはアルコール離れが進んだここ20年の動きです。居酒屋での第一声「とりあえずビール」もすっかり聞かなくなりました。
その背景にあるのは、量から質へのニーズの変化です。限られた種類のお酒をたくさん飲むのではなく、いろんな種類のお酒を、時間や場所、動機に合わせてさまざまに楽しむようになったのです。しかもこれは、性別や年齢を問わず共通の動きです。
これからは、ノンアルメニューにおいても同様の変化が起こってくるでしょう。ノンアルだけでなく、アルコール度数を低く抑えた“微アル”など、さまざまなニーズに応えるメニューラインアップを考えていくべきです。
すでにビールメーカーの中にそうした動きが出ていますが、現場でドリンクを調製できる飲食店こそ、ニーズに即した柔軟なメニュー開発ができるはず。これも、飲食店がゲコノミニケーションの担い手になれる大きな理由です。
冒頭に述べたゲコノミニケーションの目的は、よりよい社会をつくっていくことに通じます。それは差別や分断のない、誰もが幸せになれる社会の実現であり、人生の目的は幸福感の追求であるという“透明資産”の考え方につながります。
単に「メニューを揃えよう」ではなく、「メニューを通じて人々を幸せにしよう」と考える。これがゲコノミニケーション実践の第一歩なのです。
ー勝田耕司
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