コロナウィルス禍によってさまざまな「社会的弱者」の存在が明らかになりました。外出自粛にともなう景気悪化で雇止めが相次ぎ、貧困世帯も急増しています。
また、深刻になっているのが高齢者の一人暮らしが増えていること。高齢者の毎日の暮らしをサポートするための食事サービスが重要な社会インフラになってきました。
高齢者に日々の食事を届ける配食事業は、単なる食事サービスにとどまるものではありません。一人暮らしで孤独を感じている高齢者にとっては、お弁当などを受け取る際のコミュニケーションもまた、生きていくうえでの重要なエネルギーになります。
そういう点で、配食事業はフードサービス業の中でもっとも“ホスピタリティ”の要素が強く求められるといえるでしょう。どれだけ利用者に寄り添えるかが、そのビジネスの価値を決定づけるということです。
外食大手のワタミ㈱が展開している「ワタミの宅食」は、まさにこの点を配食事業における差別化のポイントと位置づけています。同社の配達員は「まごころスタッフ」と呼ばれ、担当する世帯を毎日1軒1軒訪れ、お弁当を手渡しするのが基本です。利用者との触れ合いがあってこそ、食事の価値が高まると考えているためです。
9月19日の敬老の日に先立ってワタミは、ワタミの宅食における新サービスとして「みまもりサービス」を導入すると発表しました。お弁当の配達時に利用者の元気な姿が確認できれば、スタッフがそのことを家族にメールで連絡します。
不在だったり応答がない場合は3時間以内に再度連絡し、それでも連絡がとれない場合は家族にその旨を伝えるというものです。このために専用のアプリを開発し、24時間対応のコールセンターも新たに設置しています。
ワタミの宅食ではこれまでも、利用者が住居内で転倒していたり、体調が急変しているのをスタッフが見つけてきました。命を救うことにつながったケースも年間100件以上あったといいます。警察や自治体から感謝状を授与されたことも多く、全国で300以上の自治体との間で「見守り協定」を結んでいます。
毎日お弁当を届けてくれるまごころスタッフは利用者にとって顔なじみであり、そうした身近な人が見守ってくれていることも安心感につながります。
この安心感こそ、目には見えないけれど何よりも重要な価値であり、利用者がそのビジネスを選ぶ理由です。高齢者はもちろん、スタッフから「今日もお元気でした」というメールを受け取る家族もまた、その知らせに何にも代えがたい大きな価値を感じるはずです。それこそがまさしく透明資産。ワタミの宅食の透明資産の価値を、みまもりサービスがさらに高めることは間違いないでしょう。
ー勝田耕司
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