先日の日本経済新聞に「インバウンド消費が本格回復の兆し」という趣旨の記事が出ていました。
新型コロナウィルス禍が終息に向かい、世界的に人の流れが復活したことが観光に大きな追い風になっています。
今年3月の訪日外国人による消費額は、コロナ前と比較して7割近くまで戻ったとのこと。
2019年に日本を訪れた外国人観光客は過去最高の約3180万人に達しましたが、このままでいけば2023年の訪日外国人による消費額は、その2019年を上回ることが見込まれています。そうなれば、まさに本格回復といえます。
ただ、その記事では同時に、観光需要の中身が質的に変わらなければならないとも指摘されていました。
少し前まで行動制限が続いていた中国からの観光客が本格的に戻ってくるのはこれからで、そうなってからがインバウンド本番といえますが、かつてのインバウンド消費を支えていたのが中国人観光客による“爆買い”でした。
これは観光客一人あたりの消費額を大きく高めましたが、これに頼りすぎてはいけない。いかに“モノ”に頼らない形で消費額を高めていくか。
つまり、いかに付加価値の高い観光ニーズを摑んでいくかが重要であるという趣旨です。これもまた、まったく同感です。
そして、新しい時代の観光ニーズを摑むうえで大きな役割を果たすのが「食」であると思います。とくに、日本ならではの食体験を提供できる外食ビジネスこそ、その担い手になるべきです。
これはコロナ禍前の話ですが、外国人観光客が日本でとる食行動には大きな特徴がありました。
端的に表れていたのが消費額で、食に多くお金を使う観光客を国別にみると、上位にランクされていたのはベトナムやフィリピンなど、新しい富裕層が生まれている国でした。
それに続くのが、フランスやイタリアなど豊かな食を持つ国です。つまり、食に対して高い関心を持つ人々が、日本で旺盛に外食をしていたわけです。
そうした、食についてのリテラシーが高い人を満足させるだけの食資源が、日本にはあるということです。
また、そうした人々がどのような食に満足したかを尋ねた調査も興味深いものでした。
上位にランクされたのは、寿司や天ぷらといった定番の和食ではなく、ラーメンと肉料理です。
ラーメンは店ごとの個性が表現されていること、肉料理は焼肉に代表される、日本ならではの商品や売り方の工夫がある点が評価ポイントでした。
インバウンド需要が本格回復するなかで、こうした日本の外食の価値が再認識されるようになるでしょう。
外食ならではの特別な体験ができることが、日本が築いてきた貴重な透明資産。その資産価値を磨くこともまた、2023年の大きな課題であると思います。
ー勝田耕司
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