SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の実現が、経営における大テーマになっています。
すべての人々が共存し、永続していくためにどう貢献できるかが、産業や業種の枠を越えてビジネスの共通課題になりました。人類共通の脅威である戦争が現実になったいま、そのことが厳しく問われています。
消費者直結のビジネスの代表格である外食産業は、SDGsを実現するために大きな責任を負っているといえるでしょう。とくに大切な視点は、地域社会や環境に悪影響を与えることなく、いかに「食の豊かさ」を提供していくかということです。
これまで日本は、食材の多くを海外からの輸入に頼ってきました。結果として食料自給率は低下し、「食の持続可能性」は世界でも最低レベルになっています。また安価な輸入食材は生産の過程で地球環境を悪化させるものが多く、日本はその片棒を担いでいるともいえるのです。
これから外食は、SDGs実現にいかに貢献するかという視点で食材を選んで商品化し、消費者に届けていかなければなりません。そこで得た消費者からの信頼こそ、もっとも価値ある透明資産になります。その点で私が注目している食材のひとつが「肉」です。
肉といえば、植物由来の「プラントベースミート」がマスコミを賑わせています。牛や豚などを生産する過程で地球環境に悪影響を与えるという理由からですが、それは一面的な見方にすぎません。
環境を守り地域と共存しながら、質の高い肉の生産に取り組んでいる人々は数多く存在します。それら生産者とともに豊かな食文化の実現に取り組むことも、外食の重要なSDGsであると思います。
たとえば、牛や豚の糞尿を堆肥化し、それを活用して育てた穀物などを飼料として与えるという“循環型”の食肉生産に取り組んでいる生産者がいます。これは食料自給率向上という観点からも有意義な取り組みといえるでしょう。さらに、こうした資源リサイクルを発展させて再生エネルギーの開発につなげる例もあります。
和牛に代表される日本産の牛肉は、クオリティの高さが世界で注目されていますが、SDGsという観点からも大きな可能性を秘めています。おいしい肉を安定して生産するために、生産者の人々はさまざまな技術開発に取り組んできました。
交雑技術や飼料の与え方、肥育環境など、その内容は多岐にわたります。それらの技術は結果として、食の持続可能性を高めることにつながっているのです。
人類共通の大切な食文化である肉食文化を守り、発展させていくことによってSDGsをどう実現するか。この観点から本コラムでは、しばらく「透明資産」と「肉」についての情報発信を続けたいと思います。
ー勝田耕司
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