新型コロナウィルス禍からの再スタートの年であると同時に、新しい“価格体系”をつくる年。2023年はそのように位置づけることができると思います。
昨年から本格化した値上げの動きはさまざまな商品やサービスの分野に広がってきました。その流れは今年に入っても変わらないばかりか、さらに加速の兆しを見せています。
外食業界もその例に漏れません。昨年1年間の間に、マクドナルドや餃子の王将といったコロナ禍でも好調を維持してきた大手チェーンが複数回の値上げに追い込まれましたが、それでも高騰する諸コストを吸収するには不十分なようです。
実際に今年もマクドナルドが、松が明けて間もない1月16日に価格改定を実施しました。マクドナルドは昨年3月と9月に値上げをしていますから、1年の間に3回も値上げしたことになります。これによって、バーガー類の中でもっとも安いハンバーガーの価格は170円になりました。
若い人の中にはご存知ない人もいるかもしれませんが、いまから20年ほど前にマクドナルドのハンバーガーの価格は100円を切っていました。一番安い時期には65円だったこともあります。コンビニエンスストアで売られているパンの価格よりも安く、これによってコンビニが菓子パンの価格を引き下げる動きも見られました。
こうした値下げで何が起こったかといえば、マクドナルドを利用するお客様の利用動機の変化です。ちょっと小腹を満たすといったスナック的な動機を吸収し、それによってマクドナルドは急速に店舗数を増やしました。その戦略は結局は行き詰まりましたが、価格がもたらす影響力の大きさを外食業界に知らしめたことは確かです。
その頃と比べて、マクドナルドのハンバーガーの価格は3倍近くになっています。ということは、お客様の利用動機も大きく変化すると同時に、それに見合う満足度を提供しなければならないことになります。
これは別に、ハンバーガー単品のお値打ち度を3倍近くに高めるということではありません。マクドナルドでの1回の食事で得られる満足度を高めるということです。
実際にマクドナルドのメニュー戦略は昨年から明らかにその方向に向かっていますし、マーケティング戦略も同様です。テレビコマーシャルなどでも「マクドナルドに行けば、特別な体験ができる」ことを訴えています。
値上げは今年も、外食業界共通の、かつ最大の経営テーマです。それを実現するには、外食ならではの特別な体験をお客様に提供しなければなりません。
そうした特別な、その店ならではの体験こそが独自の透明資産です。外食業界のプライスリーダーであるマクドナルドをマークし、経営戦略に学ぶべきはまさにこの点なのです。
ー勝田耕司
この記事へのコメントはありません。