回転寿司チェーン「スシロー」で起こった、店での迷惑動画の拡散が外食業界に波紋を広げています。お客が未使用の湯飲みや醤油の注ぎ口を舐めたり、レーンを流れる寿司に指で唾をつけたりといった、目を覆いたくなるような動画がSNSに投稿された事件。
他にも、「はま寿司」ではお好み注文と思われるレーン上の寿司に大量のワサビを乗せている動画が撮影・拡散されました。
ネットで注目を集める、いわゆる“バズる”ことが目的と思われますが、単なる迷惑行為にとどまらず犯罪にあたる可能性もあります。
実際に、スシローを展開する㈱FOOD&LIFE COMPANIESでは迷惑行為をしたお客に対して法的措置をとる方針を表明しています。
これは、被害を受けた企業だけにとどまらず、回転寿司業界全体に打撃を与える事件だと思います。
SNS上では「もう回転寿司には行けない」「安心して食べられない」といった声が溢れています。心無い一部のお客(お客とは呼べませんが)の行為によって、多くのお客様が外食の機会を奪われることになれば、その結果は重大です。外食業界に長く携わってきた立場から、深い憤りを感じます。
同時に、こうした迷惑行為をいかに防止するか、真剣に考えなければならないと思います。すでに「くら寿司」では店内にカメラを設置し、お客の不正行為を検知した際は従業員にアラームで知らせるシステムの導入をはじめています。
スシローやはま寿司も対策を検討中とのこと。ただ、さまざまなコストが高騰しているなかで、システム導入のための投資は企業にとって大きな負担になります。
私は、そうした防止策よりもっと大切で効果のある対策があると思います。それは、お店に“いい緊張感”を取り戻すことです。
ここでいう緊張感とは、お客様に緊張を強いることではありません。むしろ逆で、店内にお客様の笑顔が溢れ、活気に満ちた雰囲気のことです。
そうした空間を実現するには、従業員は常にお客様を見て、満足していただくための行動をとる必要があります。つまり、いい意味で緊張感をもって仕事に取り組むことになるのです。
残念ながら最近のスシローの店には、この“いい緊張感”が欠けていました。
昨年の「おとり広告」問題以降、スシローの業績は低迷していますが、商品やサービスから輝きが失われ、店にもどこか弛緩した空気があります。
かつてのような活気溢れる空間であれば、今回のような迷惑行為は起こらなかったのではないでしょうか。
本当に大切なお客様にご満足いただきながら、招かれざるお客は排除する。その結果生まれる心地よさこそ、大切な透明資産です。その実現のためには、“いい緊張感”こそ不可欠なのです。
ー勝田耕司
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