新しい“飲みのスタイル”として、これから定着し、拡大するであろう「ゲコノミニケーション」。
酒を飲む人、飲まない人がともに楽しめる場=皆が共生できる場をつくるという点で、飲食店の理想を形にするものでもあります。そういう場をつくろうという店側の強い想いこそが、「透明資産」として独自の魅力となるのです。
ゲコノミニケーションの実践はまた、新しいブランドイメージの確立にもつながります。コロナウィルス禍からの再スタートを図るうえで、これはとても大切なことです。新たな魅力を打ち出すこともまた、外食の場に再び足を運んでもらうために不可欠だからです。
たとえば、名古屋を本拠地とする居酒屋チェーンの「世界の山ちゃん」。コロナ禍が深刻だった2021年5月に、ノンアルコールドリンクの品揃えを充実させました。
酒類の提供自粛要請が続くなかで多くの居酒屋チェーンが休業を選択しましたが、世界の山ちゃんは営業を継続し、少しでも集客につながればとノンアルメニューを拡充しました。
全4ページのドリンクメニューのうち1ページをノンアルにあて、「モクテル」(ノンアルコールのカクテル)を7品目ラインアップ。女性客向けの甘い「ロイヤルネクター」から、刺激のある「シトラスパンチ」まで、多彩な味わいを揃えました。
それから1年半が経過し、このモクテルはチェーンの新しい看板メニューになっています。品揃えは12品目に拡大。当初からの売れ筋に加えて、「ミルクサイダー」や「ゆず緑茶」など、ユニークなテイストのものも揃えています。
フードメニューの看板商品である「幻の手羽先」は幅広い年齢層から支持を得ていましたが、ノンアルメニューの充実はさらに客層の幅を広げることになりました。
「串カツ田中」を展開する串カツ田中ホールディングスは、グループ企業の㈱セカンドアローを通じて新規事業開拓を進めていますが、そこではアルコールに頼らない業態開発に力を入れています。
2022年3月に埼玉・北浦和にオープンした「焼肉くるとん」では、韓国料理のサムギョプサルを主力に据え、それとノンアルの組合せを提案。美容によいとされる韓国産の「美酢」を使ったオリジナルドリンクを24品目揃えています。
ドリンクの売上げ比率は30%を占め、そのうち5割がノンアルメニュー。女性客比率は7割を超え、週末はファミリー客の集客も好調とのことですが、幅広い客層のニーズに応えるドリンクの品揃えが効果を発揮しています。
ノンアルドリンクは、より多くのお客様に喜んでいただこうという店側の想いを形にしたもの。それが売れることは店の透明資産の価値を高め、同時にブランド価値を高めることになるはずです。
ー勝田耕司
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