透明資産とは?

10月以降は値上げが避けられない生ビール。その店ならではの透明資産がより大切に

食材やエネルギーコストなどさまざまなものが値上がりしていますが、多くの飲食店にとって影響が大きいもののひとつがビールでしょう。

 

大手ビールメーカー4社が4月から5月にかけて値上げを発表し、この10月から小売・卸売ともに価格が上がります。業務用生ビールの卸売価格は2018年以来、4年ぶりの値上げです。

 

かつてのように「とりあえずビール」の時代ではなくなったとはいえ、ドリンクの売上げに占める比率が依然として高い生ビール。飲食店でも値上げは避けられない状況で、その価格をお客様に納得していただくための取り組みがこれまで以上に必要になります。

 

そこで大切なのは、本当においしいビールをお客様に提供したいという想いです。ビールという商品自体は、同じメーカーの同じ銘柄を使っている限り他店との違いはありません。しかし、お客様に対する想いの強さが、結果として品質の違いとなって表れます。

 

東京・新橋に「ビアライゼ’98」というビアレストランがあります。この店のオーナーは、かつて東京・八重洲にあったビアバーの名店「灘コロンビア」で修業を積み、灘コロンビアの閉店にあたってビールを注ぐビアサーバーを受け継ぎました。

 

製造から70年以上が経ち、現存するものの中では日本最古といわれるビアサーバーはきめ細かな泡をつくれるのが特徴。オーナーが持つ高い注ぎの技術と相まって、決して他店では味わえない生ビールを提供しています。

 

ビアライゼ’98のビールは「スーパードライ」をはじめとするアサヒビールですが、初めて味わったお客様は皆一様に「これがいつも飲んでいるアサヒのビールか」と驚かれるといいます。

 

昭和9年開店と、現存する日本最古のビアホール「ビヤホールライオン銀座七丁目店」も、生ビールのクオリティの高さで日本を代表するお店です。

 

同店の公式ホームページには「職人の技」として、在籍する3名のスタッフによる注ぎの技術やビールに対する想いが紹介されています。

 

総席数300席近い大型店でありながら、一杯のビールに対するこだわりを貫いていることが、長きにわたってビアホールの名店として高い支持を得てきた最大の理由です。

 

この2店に共通しているのはお客様への強い想いであり、それこそがもっとも価値ある透明資産なのです。

 

10月以降、これらのお店でも生ビールの価格は上げざるを得なくなるでしょうが、それによってお客様の支持を失うことはないでしょう。

 

なぜなら、お客様は価格を基準にしてお店を選んでいるわけではないからです。その店が蓄積してきた独自の透明資産こそが、お客様にとって最大の魅力であり、その店を選ぶ一番の理由なのですから。

 

ー 勝田耕司

関連記事

  1. 透明資産とは?

    丸亀製麺の大ヒット商品「うどん弁当」は 社会貢献への想いという透明資産が生んだ

    トリドールホールディングスが展開するうどんチェーン「丸亀製麺」の好調ぶ…

  2. 透明資産とは?

    すべてのお客様を大切な存在と考えることが、ゲコノミニケーションにおけるサービスの鍵

    ゲコノミニケーションとは、お酒を飲む人(ノミ)と飲まない人(ゲコ)の間…

  3. 透明資産とは?

    コロナウィルス禍がもたらした社会不安。外食が果たすべき貢献は?

    〜コロナウィルス禍がもたらした社会不安。外食が果たすべき貢献は、店…

  4. 透明資産とは?

    ワタミの宅食がはじめた「みまもりサービス」は安心感という透明資産の価値をさらに高める

    コロナウィルス禍によってさまざまな「社会的弱者」の存在が明らかになりま…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 透明資産とは?

    SNSでファンの心を掴むシェイクシャック。 情報発信でもセンスが問われる時代に
  2. ゼロコスト戦略

    SDGs実現には事業が存続することが前提。 差別化しつつ、できることはなんでもや…
  3. 透明資産とは?

    全国各地の肉食文化は世界に誇る透明資産。それは食にかかわる人々の深い想いが生んだ…
  4. 透明資産とは?

    ポイントは「お出迎え」と「お見送り」。 笑顔での応対が再来店の決め手になる
  5. 透明資産とは?

    本年もお世話になりました。
PAGE TOP