幸福感を感じながら仕事をすれば、生産性が高まる。このことを実証する数字を挙げましょう。いずれも2018年のデータです。
<平均年間実労働時間>※全従業者平均
日本 1,680時間
デンマーク 1,392時間
<時間当たり労働生産性>
日本 46.8ドル
デンマーク 77.2ドル
デンマークは日本と比べて、労働時間は18%少ないにもかかわらず、生産性は実に1.6倍という高い数字を示しています。だからといって、デンマークの職場では日本にない特殊な装置を導入していたり、生産性を高めるために何か特別な取り組みをしているかといえば、そうではありません。生産性向上の決め手はただひとつ、HYGGEであることなのです。
これまでお話ししてきたように、HYGGEはデンマークの人々にとって生き方を支える価値観であり、すべての行動を規定するものです。あらゆるモノやコト、過ごす時間を大切にする。
それは他者との関係においても同様であり、幸福感を感じることがコミュニティにおける強固な連帯や帰属意識を生みます。そして、そのことが経営において大きなアドバンテージとなるのです。
HYGGEな職場では、働く人すべてが経営理念に共感し、チームビルディングに積極的に参加します。経営者や上司に強制されて仕事をするのではなく、あくまで自発的に、お客さまや共に働く同僚のことを考え、そのために行動する。
その結果として高い生産性をあげることができます。そこでは人々のメンタルヘルスが良好な状態に保たれ、まさに“健康経営”が実現されています。
健康経営の決め手は、働く人々が「自分は大切にされている」「自分はここにいていいんだ」と思えることです。職場の全員がそういう思いを共有していれば、「あなたの代わりはいない」「だから協力し合おう」という意識や行動が生まれます。
上司の指示や命令がなければ何もしないとか、皆が忙しくしているのに自分だけ早く帰るといったことはなくなり、すべての人々が共通の目的に向かって“自然に”進んでいきます。このような職場の空気はまさにHYGGEという価値観そのものであり、ビジネスにおいても、また人生においても最大の「透明資産」といえるでしょう。
そうした幸福感のある、透明資産に溢れた職場をつくるためにはどうすればいいのか。それは特別な取り組みによるものではなく、すべて人々の意識と日常の行動にかかっています。次回はそのことについてお話しします。
ー勝田耕司
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