コロナウィルス禍の第7波の拡大が続いています。2020年春にはじまったコロナ禍も3年目に入り、もう終息に向かうはずと思っていましたが、第7波の感染者数は過去最高を記録。
やはり、しばらくはこの感染症と共存していくしかないという感を強くします。少なくとも、外食をはじめ消費関連のビジネスは、しばらく感染拡大が続くという前提で事業を考えていくしかないでしょう。
そこで浮上してくるのがテイクアウトビジネスです。コロナ禍による外出自粛で外食マーケットが縮小するなか、外食企業や飲食店はどこもテイクアウトに力を入れました。宅配も含めて、中食の市場を開拓することが生き残りの鍵になってきたのです。
実店舗を持たない「ゴーストレストラン」などそれまでになかったビジネスも生まれ、マスコミは連日それらの取り組みを紹介しました。
ところがいま、そうした話題を目にすることはほとんどありません。新鮮味が薄れたこともありますが、やはり事業として成功したとは言えないのです。その要因は何かを考える必要があります。
結局のところ、それらの取り組みは「外食ならでは」の価値を提供できなかったのです。その価値とは「お客様から積極的に選ばれる理由」と言い換えることができます。あの店の、あのメニューを食べたいという強い利用動機を摑むことこそ、外食ビジネスの成功のポイントであり、外食の存在理由です。
コロナ禍で登場した多くのテイクアウト・宅配ビジネスには、それが欠けていました。その象徴的な例が、ファミリーレストランがはじめたテイクアウト・宅配の専門業態です。
「デニーズ」「ガスト」という日本を代表するファミレス大手が2020年から相次ぎ参入しましたが、デニーズは3店、ガストは2店の展開にとどまり、まったく店舗数が増えていません。
その要因は、かつてのファミレス急成長を支えた“なんでもあり”の品揃えから抜け出せなかったことにあります。
ガストのテイクアウト・宅配専門業態は、ガストに加えて「バーミヤン」と「から好し」のメニューも揃え、その品揃えは膨大です。しかしそこに、お客様を強く惹きつける一品はありません。なんでもあるけど、どれもそこそこ、にとどまっているのです。そのことは、ファミレスの品揃えをほぼ再現したデニーズも同様です。
外食ならではの価値が必要なことは、中食マーケットの開拓においても同じなのです。その価値をつくるのは、お客様から積極的に選ばれる「この一品」であり、それを提供し続けてきたことによるブランド力こそ透明資産です。
価値ある一品=透明資産を磨くことは、新しい事業に取り組むうえでも不可欠なのです。
ー勝田耕司
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