コロナウィルス禍は多くの飲食店にとって大打撃ですが、とりわけ深刻なのは開業して間もないお店でしょう。
顧客基盤を持たず、経営資源の蓄積もないところで売上げの急減に見舞われれば、ひとたまりもありません。平時であれば軌道に乗ったであろうお店が撤退を余儀なくされるとすれば、本当に残念なことです。
しかしそうしたなかでも、この逆境をはねのけ着実に前進しているお店もあります。その原動力となっているのは、以前に本コラムでもお伝えした「キラーメニュー」の存在。そして、お店の「透明資産」をしっかりと発信していることです。
愛知・名古屋で今年2月にオープンした「ポークスタンド スリーピッグ」はその格好の例といえるでしょう。メニューはローストポークを乗せた丼と豚角煮を乗せた丼の2品のみ。
真空調理を活用してロゼ色に仕上げた自家製ローストポーク、160gの豚三枚肉を丸ごと煮込んだ角煮はともにインスタ映えするビジュアルで、オープンに合わせて開設したお店のインスタグラムで発信しました。
これがSNSで拡散したことで集客に成功したわけですが、お店が伝えた情報はこのキラーメニューの存在だけではありません。
同店の創業メンバーは3人で、養豚農家、肉問屋、和食の料理人という異なるキャリアを持っています。
差別化された食材に独自の加工を施し、それに合った調理法でオリジナル商品に仕立てるというのが事業モデルですが、その事業モデル自体をお店のストーリーとしてSNSで発信しているのです。
最初に口コミが広がったのは10代~20代の女性客で、メニューのビジュアルやインパクトが興味を持たれたためですが、その後に30代~50代の年齢層、さらにはビジネスパーソンやファミリーなどへと広がっていきました。
これはメニューだけでなく、お店のストーリーが多くの人々の興味をかきたてたためでしょう。このストーリーこそお店独自のもの、すなわち透明資産です。
同店ではグラスにたっぷりのレモンを盛りつけた「レモTONスカッシュ」というオリジナルのドリンクがあり、お店のインスタグラムのアカウントをフォローしてくれたお客さまにはこれを無料で提供するサービスも行なっています。
お店の売りをアピールしながら顧客の輪を広げる効果的な手法といえるでしょう。
当初はコロナ禍の影響を考えランチ営業のみでスタートしましたが、営業が軌道に乗ってきたことを受けて7月からはディナー営業も開始しています。
効果的な情報発信がお店を救う。そのことを実感させてくれる〝透明資産マーケティング〟の好事例です。
ー勝田耕司
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