4月から新年度がスタートしました。
街の様子を見ていると、日本もいよいよ“アフターコロナ”に向けて動きはじめたという感を強くします。
オフィス街では、真新しいスーツに身を包んだ新入社員の姿を多く見かけます。これまでオンラインだった入社式などのイベントが対面式になり、人と人が直に接する本当の意味でのコミュニケーションが、さまざまな場面でなされるようになりました。
外食の現場でも同様です。居酒屋大手のワタミでは、この春の宴会の予約が前年比で4倍になったといいます。
焼とりチェーンの鳥貴族も既存店の回復傾向が顕著で、今期の上半期は営業利益で黒字となり、通期でも3年ぶりの最終黒字が確保できる見通しです。
社会が活気づくのに合わせて、外食の場にもお客様が戻ってきました。インバウンドの回復もあり、外食は本格復活の時を迎えています。
私がフランチャイジーとして経営する「ラーメンまこと屋」でも、この春に新入社員を迎えました。外食業の経営環境が厳しい中にあっても、外食を就職先に選んでくれたことに感謝すると同時に、大きな責任を感じます。何より強く思うのは「外食ビジネスって本当に楽しい」と、仕事を通じて感じてもらいたいということです。
まこと屋の業種はラーメン店ですが、売っているものは商品としてのラーメンだけではありません。スタッフの快活で気持ちのよいサービス、お客様の笑顔と活気に溢れた店内の雰囲気なども重要な売り物であり、それが外食ならではの価値をつくっています。
コロナ禍の真っ只中で1号店をオープンして以来、その価値提供を続けてきたことが、苦難を乗り越えられた最大の理由だと思っています。
コロナ禍にあった3年間、外食業界ではさまざまな新しい取り組みがなされました。外出自粛や、多くの人が集まる“密”の回避などを受けて、テイクアウトやデリバリーの新業態が次々に登場しましたが、その多くは軌道に乗っていません。
その要因は、突き詰めれば外食ならではの“楽しさ”に欠けていたことだと思います。
ラーメンの分野でも、24時間ラーメンを販売する自動販売機が雨後の筍のように急増しました。しかしこれも、便利ではあっても外食本来の楽しさを提供しているとはいえません。
コンビニエンスストアが、電子レンジ加熱で食べられるラーメンをより安い価格で豊富に揃えているいま、厳しい戦いを強いられるのは必至でしょう。
外食において、楽しさを生み出すのは商品ではなく、あくまで人です。人の魅力こそ店や企業の魅力であり、最大の透明資産なのです。
独自の透明資産を見つけ出し、それを磨き続けることこそ、外食が本当の意味でコロナ禍を乗り越える唯一の道だと思います。
ー勝田耕司
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