HYGGEが人々の重要な価値観になっているデンマークに、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか。幸福度が世界で常に上位にランクされることから、何か明るい印象を受けるかもしれませんが、それは間違い。デンマークは世界有数の「暗い国」です。
北欧は緯度が高いため季節によっては日照時間が極度に短く、10月から3月は陽の光がほとんど浴びられません。また、1年365日のうち半分は雨が降っています。寒さが厳しく、暗闇に閉ざされる国がデンマーク。でも、だからこそHYGGEが大切なのです。
日光が降り注ぐ期間が限られているからこそ、その季節を大切にしようと考える。暗闇の中で灯る小さな光、たとえばキャンドルの火に温かみを感じる。このように、わずかしか手に入らないことが「ありがたさ」を生み、その時間や空間を過ごすことに幸福を感じるのです。これこそがHYGGEという価値観です。
こうした価値観の大切さは、国によって変わることはないと思います。この日本でもそうです。蛍光灯がつき白々と明るい部屋と、暗い中に温かみのある照明がほんのりと灯る部屋。どちらで過ごすことに幸福を感じるかといえば、間違いなく後者でしょう。
なぜなら、その状態こそが人間にとって「自然」であるからです。仲間とともに外に出かけて、自然の中で時間を共有したり、自然と親しむ。家の中にいる時も、自然な光が灯る部屋で過ごたり、その光で本を読む。こうした行動が幸福感を得ることにつながります。
このように考えると、われわれ日本人もHYGGEな考え方や行動を無意識に望んでいることがわかります。たとえば、炬燵に入ってまったり過ごしたり、家族や親しい仲間と食卓を囲む時間は本当に楽しい。
豊かな自然の中で過ごす、温泉でほっこりするなどは、誰もがしたいと思っていることです。川のせせらぎや虫の音といった自然の音を聞いていると気持ちが落ち着くし、自然を感じられるものはとても魅力的です。日本料理は盛りつけによって季節を表現していますが、これも自然を感じることこそが価値なのです。
HYGGEなものは、あなたのまわりに自然にあります。その一つひとつが、あなたにとってかけがえのない「透明資産」です。その透明資産を心地よいものと感じ、その資産を生かすための行動を心から楽しむことこそ、自分ならではのHYGGEを実現することにつながります。それは人生を楽しく豊かなものにすると同時に、実はビジネスに不可欠な「生産性」を高めることにもなるのです。
幸福を感じながら生産性を高める。この理想的な状態をつくるためのポイントは何かを、次回は考えていきましょう。
ー勝田耕司
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