前回お話しした「この一品」を磨くことの大切さは、あらゆる外食ビジネスに共通です。長引くコロナウィルス禍で外食マーケットが縮小する一方、中食市場の拡大が続いています。
そこで主役になっているコンビニエンスストアやスーパーマーケットの食品はこの間、品質の向上に取り組んできました。そこでベンチマークしたのが外食のメニューです。とくにコンビニが力を入れてきたのがラーメン。そのクオリティの向上ぶりは目覚ましいものがあります。
しかし、だからといってラーメンの市場が小売業に侵食されっ放しかといえば、決してそうではありません。その店ならではの看板商品を磨き続けてきたラーメン店やラーメンチェーンは、外出自粛が続くなかにあっても継続してお客様の支持を得ています。むしろ、その輝きはコロナ禍によって増しているといえるでしょう。
たとえば、京都を本拠地とするラーメンチェーン「魁力屋」。数量限定で提供している「九条ネギラーメン」は、千切りにした九条ネギをどっさり、下の麺が見えないほどに盛っているのが特徴です。毎日京都から届く新鮮な九条ネギを使っているのが売りで、店でカットしているため不揃いですが、それがかえってさまざまな食感を生んでいます。まさに“外食ならでは”のメニューといえます。
㈱物語コーポレーションが展開している「丸源ラーメン」の看板商品「肉そば」も、強い吸引力を持ったメニューです。トッピングは豚バラ肉を特製のタレで炊き込んだもので、手鍋を使って一杯ずつ、オーダーが入るごとに調理しています。
この調理は店のオペレーションの核と位置づけられ、他の調理ラインもすべて肉そばの調理と連動するようにレイアウトされています。丸源ラーメンの最近のテレビCMでは、肉そばの調理作業を前面にアピールすることで、チェーンのブランド力をさらに高めようとしています。
私がフランチャイジーとして運営している「ラーメンまこと屋」では、看板商品の「牛じゃんラーメン」の牛骨スープは店で牛骨を下処理してとっています。硬い骨をハンマーで割り、特殊な大型圧力寸胴に入れて炊き込むことで、独特の濃厚な白濁スープが生まれます。
その作業は大変ですが、だからこそ小売業で売っているラーメンには決して出せない品質を提供できるのです。お客様の表情には一様に「まこと屋のラーメンはやっぱり違う」という満足感が浮かんでいます。
こうした外食ならではの商品を持つラーメンチェーンは、まさに独自の「透明資産」を持ち、それを磨き続けてきたことに人気の秘密があります。商品そのものの価値に加えて、価値向上に取り組む企業姿勢もまた、お客様から選ばれる大きな理由なのです。
ー勝田耕司
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