全国的な感染拡大が続くコロナウィルス禍が外食企業の経営に影を落とすなか、それと並んで大きな問題になっているのが野菜の高騰です。
その要因は天候不順。記録的な長梅雨で多くの作物が不作となり、各地を襲った水害の影響もあって収穫がままならない状況が続いています。
コロナ禍の影響もそれに拍車をかけています。日本で農業に従事してきた外国人労働者や実習生などが、母国に帰った後で再入国できなくなっています。収穫のための人出が足りず、せっかく生産したものが出荷できない状況が続いているのです。
そうしたなかで先頃、注目すべきニュースが報じられました。日本最大のカレーチェーン「CoCo壱番屋」を展開する㈱壱番屋が、買収によって野菜工場を傘下に収めるというのです。
買収したのは㈱エージーピーという会社が展開している工場野菜生産および販売事業。千葉県山武郡に工場があり、葉物野菜を中心に1日4000株の生産能力を持っています。
壱番屋によれば、昨今の異常気象によって生鮮野菜の価格高騰や必要量が確保できないといった状況が続いていることを受け、自社で野菜を栽培する体制づくりを検討していたとのこと。
エージーピーは大手航空会社が共同出資する航空関連事業者で、コロナの影響で事業が低迷するなかで事業再編のため野菜工場売却を決断し、壱番屋がその引き受け手になったとのことです。この工場を拠点に今後、関東を中心とする約450店のCoCo壱番屋に自社栽培の野菜が供給されることになります。
CoCo壱番屋といえば、きわめて高いQSCのレベルを維持しているチェーンとして知られています。どの店に行っても気持ちのよいサービスが受けられ、クレンリネスが行き届いていることに驚かされますが、それを支えているのが盤石な食材供給体制です。
カレーソースを製造する自社工場は業界屈指の製造能力を持ち、衛生管理も万全。現場スタッフが安心して調理とサービスに取り組める体制をつくっていることが、高いQSCを支えているのです。
今回の野菜工場買収も同様の狙いによるものであり、戦略の一貫性を感じます。それと同時に、厳しい事業環境においても企業を前進させるエネルギーは大きなビジョンであることを実感します。
カレーチェーンとして唯一無二の存在になるという目標があるからこそ、壱番屋は野菜の自社栽培という決断をしたのです。
この発表直後に壱番屋は、カレーの本場であるインドに1号店をオープンしました。日本独自のカレーを世界に広げるというビジョンがまた一歩、実現に近づいたわけです。
ー勝田耕司
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